捕獲されました。年貢の納め時というやつ。
2017年12月25日 (月) | 編集 |
これまでのブログの流れと、まったく乖離した話なんだけど、ぼく、以前、某病院の警備員の仕事をしていたことは書きましたよね。

平日は、駐車場や出入り口に立っての案内業務が主だったのですが、土日の昼夜が主戦場でした。事務や、外来系の医療職員は、ほとんどが休む中、電話交換手になるのが警備員の主な務めでした。

病院の通常診察は、すべて休診。ただし、救急外来が開く。

1.東京消防庁の救急隊から、受け入れ可能かどうか緊急連絡が入るのを、看護師につなぐ。

「お世話になってます、☓☓救急隊です。57歳男性、内科で受け入れ可能でしょうか」

「承知しました、看護師につなぎます。お待ち下さい。……看護師さん、警備室です。☓☓救急隊から問い合わせです。つなぎます」

といった具合。

2.一般患者さんから、救急外来にかかりたいが診察可能かどうかの問い合わせ。その病院の救急外来では内科と外科の対応しかできなかった。簡単に症状を聞いて、たとえば骨折のようであるなら整形外科は対応外なので、おことわりし整形外科のある病院をさがすようお願いする。休日に整形外科の開いている病院を事前に調べておいて(病院からの支援はなく、まったく警備員の個人的労力による)、紹介すると対応が丁寧なので納得してもらえる可能性が高い。

もちろん、問題のない場合、判断つきかねる場合は、看護師につなぐ。病状の判断は医師にしかできないことになっているので、

「風邪なら大丈夫ですよ、寝ていてくださーい」

とかは警備員は言うことができない。すべての相談電話は、一度、看護師につなぎ、看護師が医師の判断をあおいで受け入れの可否を相談するという形が基本です。

3.街の薬局の薬剤師から、処方を変更したいので医師につないでくれ、という問い合わせ。

4.病院の関係者から、「今日、事務長、出てる? いたらつないで?」のような院内連絡。

5.入院患者の家族から、面会時間は? もう夜中だけど、いまから必要な荷物届けに行ってよいか? などの問い合わせ。

6.「屁が止まらないんだけど、おれ、なにか病気かね?」とか、「わたし、このまえ古本で潜水艦入門っていう本を買ったんですよ。で、ちょっと潜水艦にはくわしいんですよ。で、まあなんつったらいいんでしょ、自衛隊の人も、わたしにアドバイスを求めたほうがいいと思うんですよ。どう思いますか?」とかの、バリサルダ人間への対応。こいつら共通して、話が何の中身もないのに長いんだ。

いろんな種類の電話を瞬時の判断でさばいてゆく、すてきな仕事でした。おかげで、けっこうスキルあがったように思うの。

1.の救急隊からの連絡は問答無用で検討するルールなので、警備員的には否も応もなく、看護師につなぐのみ。看護師も拒否はできないから文句は言わない。問題なのは、2.の一般患者からの問い合わせ。

繰り返しになりますが、法的ルールでは、病状の判断は医師にしかできない。警備員は電話を淡々と看護師につなぐ。看護師は患者から症状を聞きとって、診察の必要があるか医師に訊ねる。医師が、来院か自宅で様子を見るかの判断を下す。

という流れは建前であり、人的資源は限られている。たとえば看護師が点滴や皮膚の切開の処置中であれば、一段落つくまでは、どうしたって電話に出ることができない。

夏場は、熱中症の患者で処置室があふれる。冬なら、インフルエンザ、ノロ、RSウイルスで処置室があふれる。待合室に30人待ちという状況はザラ。そこへもってきて、最優先対応が義務づけられている、救急隊が連続で到着して、搬送してきた重篤な患者さんの一刻を争う処置がくわわる場合も、本当に本当によくある。

しかし、一般患者さんからの問い合わせの電話はひっきりなしにかかってきて、電話なりっぱなし。こうなると、警備員としては、病状の判断ではなく、

「申し訳ありませんが、現在、処置がたてこんでおりまして看護師に電話をおつなぎできません。看護師とご相談いただいたうえで、ご来院いただく形をとっておりますので、お急ぎでしたら、他の病院をお探しください。おつらいところ、大変申し訳ございません」

という形で、低頭しながら電話を切る。あるいは、10分、20分後に掛けなおしてもらう。ただし、喘息の訴えの場合は生命に関わるので、警備員ながら修羅場の処置室に突入して、

「喘息です」

と、殺気立つ看護師に訴える。夏場、冬場、まじ地獄。

大半の人は、時期によって病院が混むのは常識として分かっているから、掛けなおしのお願い、別の病院さがしのお願いで納得してくれ、ありがたいのだけれど、バリサルダ将軍のごときクズが確実に存在する。

「なにいってんだてめえ、指をざっくりと包丁で切ったんだ、血が止まらねえんだ、死んだらどうするんだ責任とるのか、てめえ」

さぞ痛いでしょうし、本来なら外科は対応するんだけど、いまは無理なんです。救急隊が搬送してきた重篤な患者さんばかりで処置室いっぱいなんです、処置終了の目処がまったくたってません、病院パンクしてます、無理です。そのままにしろとは言わないから、どうか、べつの病院をお探しください。

これで、突っぱねるしかない。もし、バリサルダ将軍の圧力に屈して看護師に電話つなごうものなら、

「うるさいよ! いまの状態わかってるでしょ! 無理! そっちでなんとかしてよ!」

看護師の本気の怒声にさらされる。そりゃそうだよ、必死の処置中だもの。とうてい、つなぐことなどできず、警備員としても絶対に退くことができない。さすがに、死ぬかどうか瀬戸際の患者さんがいますと明かすわけにはいかないから、

「重篤な患者さんに対応中です。どうしても手が離せません。無理です。どうか、お察しください」

「知るか、おれに関係あるか」

ギリギリまで情報あかすも、この会話。もうしらん。

「申し訳ございません。おつなぎできません」

「うるせえ、いいから、いますぐ、つなげ」

「できません」

「てめえ、名前を名乗れ、院長に報告するぞ!」

「わたくし、警備室のたれざえもんと申します。どうぞ、報告なさってください。しかし、おつなぎできません。他の病院をあたっていただけませんか」

「うるせえ、おれはその病院の近くに住んでるんだ、他の病院なんか遠くて行けるか!」

「申し訳ございません、いまは無理です」

押し問答だけど、こんなのの相手をしてる間に、待機中の電話が山ほど積み重なってゆく。最終手段は、

「おそれ入ります、救急隊からの連絡が入りました。一度、電話切ります。失礼いたします」

で切っちゃう。救急隊からの対応要請のために、できるだけ電話回線を空けなきゃ決定的にまずいから、バリサルダ人間相手にいつまでもかかずらってる暇がない。

ちなみに、警備員は12時間交代のシフトで、ひとりぼっち。12時間休みも助けもなしで戦う、まじ地獄。

電話切られて怒り心頭のバリサルダ人間は、激昂のまま来院して受付ですぐ診察しろとごねるけど、無理なものは無理。待合室で5時間も6時間も待たされた挙句、発狂して怒鳴り暴れだす。こっちも、遊びたくて楽したくて断ってるわけじゃねえというのが、どうしても理解できない、自分のことしか考えられない、バリサルダ人間。最後は警察にゆだねるしかない、ということになる。

バリサルダみたいな手合は、自分のやったことを裏返して徹底的に責任とってもらうしかないんじゃないかね。だって、

「どうして俺の電話を優先しないんだ、つなげ、いいから、つなげ、いますぐつなげ」

って要求は、現に、いま処置室のベッドで手当中の誰かをほったらかしにしろ、ってことですよ。狭心症おこして、医師と看護師が必死に緊急救命処置ほどこしてる最中だったら? それ、ほったらかして電話にでろってことだよね?

あんた自身が心臓発作で搬送されたときも、途中で、

「カッターで指切っちゃっいましたあ。診てもらえますかあ?」

みたいな電話に出ていいよね? だって、あんた自身が死にそうでも、カッターで指切った人には関係ないんだから。それでいいって誓約書、書いてもらえませんか。そして、全国の病院で共有するデータベースに「バリサルダ人間」と登録して、全国で同じ扱いにするシステムが必要だと思うんだ。

ぼくは、こういうひっきりなしの電話に対応して喋りながら、病院内の巡回(施錠チェック)とかやってた。幽霊こわいけど、実際のところ、それどころじゃなかったよ。生きてる人間のほうが厄介だった。

もちろん、悪いことばかりではなく、がんばってるうちに看護師に認められて、

「うーん、しつこい患者か、わかった。いいよ、あなたの頼みなら電話でてみるよ、つないでいいよー。でも忙しいから、次からの電話は引き伸ばしてね、お願いしまーす」

と、やさしく言われるときが来る。最初の信頼を得られた瞬間は、嬉しくて泣きそうになっちゃった。半年以上かかったけど。つらかったけど、やりがいのある仕事だったなと、なつかしく思い出しちゃう。

話がそれたけれど、いくらサービス業でも、バリサルダ人間を相手に下手にでるのは決定的によくない。あいつら、際限なく、どこまでもつけあがってくるから。病院だと、ほかの患者さんの生死にまで関わりかねない。

本当に、「バリサルダ人間」属性を記録して共有するデータベース、必要だと思うよ。

「何年何月何日、どこ病院で、あなたはこういう行動をとった記録があります。同じ状態の逆の立場なので、あなたは、今から報復されます」

にっこり宣言できるように、具体的な記録を残すようなやつ。

病院での経験と、バリサルダ将軍とのつきあいから、あいつら、まじで自分がえらいと思ってるから報復されることを理解させないとだめよ。という結論を得るに至りました。

真っ黒い長文だ、すげえぜ。
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コメント
この記事へのコメント
No title
考えさせられますなあ。
現場で対応する人間が一番ワリ食ってるというか。

何の基準も方針も示さず、現場に丸投げしてるだけね。
せめて「このラインを超えたら無下に断っていいから」と
上がお墨付きをくれたらいいのに。
そこんとこ、現場の人間がリスクを負って対応するってのがね。

業務自体は減ってないのに「残業減らせ」としか言わない
会社のお偉いちゃんと被る。
2017/12/26(火) 00:53:09 | URL | まう #eABOSxXo[ 編集]
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2017/12/25(月) 20:14:24 | | #[ 編集]
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